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    <title>スコット・ウォーカーを聴きながら編むアドリブ小説by金木静　　　　「風と月と緑」　　　</title>
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    <pubDate>Tue, 03 Aug 2010 22:24:53 GMT</pubDate>

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        <title>RSS: スコット・ウォーカーを聴きながら編むアドリブ小説by金木静　　　　「風と月と緑」　　　 - </title>
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    <title>tuki35</title>
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            <category>月</category>
    
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    <author>nospam@example.com (金木静)</author>
    <content:encoded>
     &lt;br /&gt;
　あたし達は再び駅にいた。&lt;br /&gt;
　けれど、着いた時とはまるで様子が違ってしまっていた。&lt;br /&gt;
　単線でたったひとつしかないホームが空っぽになってしまい、あたし達をここまで乗せてくれた列車が忽然と消えてしまっていたのだ。&lt;br /&gt;
　しかも、駅舎もなんだか妙だった。西部劇に出てくるような木造の建物だったのに、なんだか日本の片田舎にでもありそうなモルタル作りの駅になっている。&lt;br /&gt;
「いったい、どういうこと？」&lt;br /&gt;
　月は何も応えてくれない。さかんにパソコンで何か調べている。&lt;br /&gt;
　そしてあたしには、再びデジャブみたいな奇妙な感覚が蔓延っていた。なんだか、うんと幼い頃に来たことがあるような・・・・。&lt;br /&gt;
　待合室から駅の前に出てみる。&lt;br /&gt;
　赤いポストがあって、その横に大きな桜の木が一本。誰がどう見ても日本の光景でしかない。&lt;br /&gt;
「やっとわかったよ！」&lt;br /&gt;
　飛び出してきた月が言う。&lt;br /&gt;
「今は１９５８年だ」&lt;br /&gt;
「そんな昔なの？あたしはまだ生まれてないってことか・・・・。あのね、あたしはね、ここは日本だと思う。それにね、この駅もその桜も、それから田舎っぽい町並みも、どうしても見覚えがある気がしてならないの」&lt;br /&gt;
「あっ！」&lt;br /&gt;
　と、あたしと月は同時に叫んでいた。&lt;br /&gt;
　二人で一緒に振り返る。&lt;br /&gt;
　駅の看板には大きな字でこう書かれていた。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　　　　　五百石駅&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　そう、ここはあたしが生まれ育った町だったのだ。&lt;br /&gt;
　ただし、あたしが生まれるずっと前、昭和３３年の。&lt;br /&gt;
　 
    </content:encoded>

    <pubDate>Mon, 22 Mar 2010 14:15:05 +0900</pubDate>
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    <title>kaze35</title>
    <link>http://home.net50.ne.jp/sizuka-kanaki/blog/index.php?/archives/83-kaze35.html</link>
            <category>風</category>
    
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    <author>nospam@example.com (金木静)</author>
    <content:encoded>
    「ねえ・・・・。ということはもしかして、あたしがメンフィスでパパに逢えたとしても、パパにはあたしが見えないってこと？お話も出来ないってこと？」&lt;br /&gt;
　と、風子は絶望的な声で言った。&lt;br /&gt;
　実は僕もほとんど同じことを不安に感じていたのだが、それを口にするわけにはいかなかった。&lt;br /&gt;
「わからんよ。そんなこと、君のパパに逢ってみなきゃわからんよ。なっ、諦めるのはまだ早すぎる。とにかく大急ぎでメンフィスへ行ってみよう」&lt;br /&gt;
「わかった。でも、どうやって？」&lt;br /&gt;
「馬鹿だな、駅まで戻ってあの列車で行くのに決まってるじゃないか」&lt;br /&gt;
「あの列車、ほんとにメンフィスまで行ってくれるの？」&lt;br /&gt;
「当たり前だよ。そもそも君がメンフィス行きの列車だって教えてくれたんじゃないか」&lt;br /&gt;
「だって・・・・駅のアナウンスでそう聞こえたんだもん」&lt;br /&gt;
「だったらそれを信じていればいい。それに、僕たちがメンフィスへ行く方法なんて、他に何かあると思うかい？」&lt;br /&gt;
「じゃあ、また歩かなきゃいけないの？」&lt;br /&gt;
「そうだよ」&lt;br /&gt;
「あの駅まで？」&lt;br /&gt;
「そうだよ」&lt;br /&gt;
「あたし・・・・もう歩けない。ほら」&lt;br /&gt;
　そう言って風子は、素足になって靴擦れを見せてくれた。&lt;br /&gt;
「大丈夫！ちゃんと負ぶってやるから」 
    </content:encoded>

    <pubDate>Tue, 02 Mar 2010 11:35:22 +0900</pubDate>
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    <title>kaze34</title>
    <link>http://home.net50.ne.jp/sizuka-kanaki/blog/index.php?/archives/82-kaze34.html</link>
            <category>風</category>
    
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    <author>nospam@example.com (金木静)</author>
    <content:encoded>
    「あのひと、あたし達が見えてなかったんじゃない？」&lt;br /&gt;
「うん、どうもそんな感じだったな」&lt;br /&gt;
「どうして？ねえ、どうしてなの？」&lt;br /&gt;
「どうしてって訊かれても・・・・そんなこと僕にもわからんよ。こっちこそ訊きたいくらいだ。けど、もしかしたら・・・・」&lt;br /&gt;
「何？もしかしたら何だっての？」&lt;br /&gt;
「１９７６年に生きるあのひとにとって、僕らが未来から来た人間だから・・・・見えなかったのかもしれない」&lt;br /&gt;
「まさか！そんなの、おかしいわ。だって、あなたはあたしにとって１００年も先の時代から来た人間なのよ。なのにあたしにはちゃんとあなたが見えている。ねっ、おかしいでしょ！？」&lt;br /&gt;
「そうなんだよ・・・・だから僕にもわからないんだよ」&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
 
    </content:encoded>

    <pubDate>Sun, 21 Feb 2010 08:35:02 +0900</pubDate>
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    <title>tuki34</title>
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            <category>月</category>
    
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    <author>nospam@example.com (金木静)</author>
    <content:encoded>
    　ドアがゆっくり開く。&lt;br /&gt;
　お買い物に行ってきたような荷物を抱えて女性が入ってくる。&lt;br /&gt;
　ジーンズにTシャツといった、二十歳くらいの学生っぽい女性だった。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
「アッ！」&lt;br /&gt;
　と、思わずあたしは声を出してしまっていた。彼女がママにそっくりだったからだ。けど、ママでないことは明らかだった。そう、たとえて言えば「ママの妹」って感じで似た女性だったのだ。&lt;br /&gt;
　そして不思議なことに、彼女はあたしの声が聞こえなかったみたいに無視してしまい、でも何らかの気配を感じたのか、訝しげな目つきで部屋を見回し、それなのにあたしの姿も月の姿も見えていないらしく、小首を傾げただけ。そして、あたし達が乱したベッドを直し、出しっぱなしにしていたスコットやエルビスのレコードをすべて片付けてから、彼女は部屋から出ていった。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　あたしと月は、ポカンとしたまま目を合わす。&lt;br /&gt;
「いったい、どういうこと？」 
    </content:encoded>

    <pubDate>Sat, 13 Feb 2010 15:30:10 +0900</pubDate>
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    <title>tuki33</title>
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            <category>月</category>
    
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    <author>nospam@example.com (金木静)</author>
    <content:encoded>
    　あたしがこの部屋に来たことがあるように感じてしまうのは、あくまでも、そんな気がするというだけのことでしかない。いわゆるデジャビュでしかない。&lt;br /&gt;
　そもそも、今現在が１９７６年であれ、ありのままに２００８年であれ、そんな時空の歪みなんかにまったく関係なく、あたしは生まれてこのかた一度だって、アメリカなんかに旅したことがないのだから。&lt;br /&gt;
　それでも、この部屋には「父」を感じさせられてしまう。スコット・ウォーカーやエルビスのＬＰレコードばかりでなく、夥しい数のSP盤、それらはすべて「父そのもの」といっていいくらいのコレクションばかりだ。&lt;br /&gt;
　１９７６年当時に、パパが最初の結婚をしていたことを話すと、月はひどく驚いた。&lt;br /&gt;
　月が何を想像したのか、あたしには手に取るようにわかる。パパがこの部屋で、最初の奥さんと暮らしていたのではないか、そんな想像をしたのに違いない。&lt;br /&gt;
　そんな事実があったのかどうか・・・・それはあたしにだってわからない。わかるわけがない。あたしが生まれる１７年も前のことなのだ。&lt;br /&gt;
　それに、もしそんな事があったとしても・・・・どうして月とあたしが「ここ」に来なければならなかったのか？&lt;br /&gt;
　あたし達が乗った列車は、真冬のシベリア大陸をモスクワに向けて走っていたはずなのだ。それがいきなりメンフィスに向けて走り出し、こんな砂漠の中の田舎町で停まってしまった。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
「ねえ、あたし達はいったい、何処に向かっているの？それに、いったいここは何処なのよ？」&lt;br /&gt;
「僕達が、というかあの列車が、メンフィスに向かっているのはほぼ間違いないと思う。そして多分、ここはメンフィスとはさほど離れていない田舎町なんだと思う」&lt;br /&gt;
「どうして・・・・そう思うの？」&lt;br /&gt;
「僕達の目的が、君のお父さんに会うためだからだよ。あの列車は、目に見えない何らかの力に導かれて、僕達を君のお父さんに会わさせるために走ってくれているんだと思う」&lt;br /&gt;
「目に見えない力って？・・・・神様ってこと？」&lt;br /&gt;
「うん、そうなのかもしれない。けど、もっとはっきり言ってしまえば、僕らは君のお父さんの魂に引っ張られているんだと思う。この部屋で確信したよ」&lt;br /&gt;
「どうして？」&lt;br /&gt;
「きっと、お父さんはここで暮らしていたんだと思う。君の知らない最初の奥さんとだ。それを、お父さんは君に見せたかったんだよ」&lt;br /&gt;
「何のために？」&lt;br /&gt;
「親ってのは、そういうもんなんだよ。愛する娘に、自分の人生のすべてを伝えておきたくなる」&lt;br /&gt;
「じゃあ・・・・メンフィスまで行けば、パパに会えるの？」&lt;br /&gt;
「それは、まだわからない。ひょっとしたら、会えるのかもしれない。会えるのは、この旅のもっともっと先なのかもしれない。けど、もし会えないとしても、メンフィスにはきっと、君のお父さんの生きた証が何らかの形で残されているはずだ。あの列車はきっと、そこまで僕らを導いてくれるはずだよ。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　デジャビュ！！&lt;br /&gt;
　不意に、次に何が起ころうとしているのか、あたしには手に取るようにわかってしまった。&lt;br /&gt;
　ハイヒールの足音が響きだし、それは次第にこの部屋に近づいて来て、ドアの前に立つはずだ。&lt;br /&gt;
「誰か近づいて来る・・・・きっと女性だわ。もしかしたら、この部屋の住人かもしれない」&lt;br /&gt;
　あたしは月に言った。&lt;br /&gt;
　そして実際、足音が響きだした。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
 
    </content:encoded>

    <pubDate>Wed, 16 Dec 2009 16:55:18 +0900</pubDate>
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    <title>kaze33</title>
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            <category>風</category>
    
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    <author>nospam@example.com (金木静)</author>
    <content:encoded>
    　ＳＰレコードをあさっていたわけを話すと、風子は聴いてみたいと言いだした。&lt;br /&gt;
　エルビスのをかけてみる。ＳＰにも対応するプレイヤーだったのだ。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　まさに、エルビス・プレスリー本人が歌うところのハウンドドッグそのものだった。&lt;br /&gt;
「どうしてこんなものがあるんだろう・・・・。あの時代はとっくに４５回転のドーナツ盤だったはずなのに」&lt;br /&gt;
「もしかしたら、市販されてたわけじゃなくて、ジュークボックス専用のレコードだったんじゃない？初期のジュークボックスってＳＰを使ってたとかって聞いたことあるような気がする。あまり自信ないけど」&lt;br /&gt;
「うーん、そうかもしれんなあ。ところで、こんなレコードをコレクションしてた人って、何か心当たりある？もちろん君のお父さん自身も含めて、お父さんの友達とか恋人とか・・・・そう、たとえば親戚の人で１９７６年当時にアメリカに住んでた人とか、何でもいいから心当たりない？」&lt;br /&gt;
「わからないわ・・・・。だって、あたしが生まれるずっと昔のことだもん」&lt;br /&gt;
「そうだね・・・・」&lt;br /&gt;
「あっ！」&lt;br /&gt;
「うん、どうした？」&lt;br /&gt;
「１９７６年って、確かパパが文学賞をとった年だ！」&lt;br /&gt;
「そうか、その頃の君のパパは、もしかしてアメリカにいたとか？」&lt;br /&gt;
「わからないわ、そんなこと。少なくともあたしは聞いたことがない」&lt;br /&gt;
「けど、可能性はあると思う。海外にいて日本の文学賞を受けた例もけっこうあるはずだから。で、それを切っ掛けに日本に帰って作家活動を始めたとか？」&lt;br /&gt;
「わからない・・・・。でも、そんなんだったら受賞時の記録に残るんじゃない？」&lt;br /&gt;
「そうだな・・・・」&lt;br /&gt;
「ただ・・・・」&lt;br /&gt;
「ただ？」&lt;br /&gt;
「その頃のパパは、きっと最初の結婚をしてた頃だと思う」&lt;br /&gt;
「最初の？」&lt;br /&gt;
「そう、パパはあたしのママと結婚するずっと前に、結婚してたことがあるの」&lt;br /&gt;
「なんだって！？」 
    </content:encoded>

    <pubDate>Fri, 13 Nov 2009 23:50:53 +0900</pubDate>
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    <title>kaze32</title>
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            <category>風</category>
    
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    <author>nospam@example.com (金木静)</author>
    <content:encoded>
    　結局、僕らはこの部屋で泊まることにした。いったん汽車まで戻って、明日にまた出直すことも考えたのだが、夜中にこんな砂漠を何時間も歩くなんて出来そうになかったのだし。&lt;br /&gt;
　風子は僕の横で眠っている。病院にあるような狭いシングルベッドはとても窮屈だった。何度も寝返りをうつ風子がすぐ落ちそうになるので、抱えていてやらなければならなかった。&lt;br /&gt;
　そおっと手を離し、風子を起こさないようにしてベッドから出る。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　ステレオセットの横に、古めかしい木製のレコード棚がある。&lt;br /&gt;
　入っていたのは、スコット・ウォーカーのアナログ時代のすべてのソロアルバムと、エルビスのかなりの数のアルバムと、アメリカで発売されたジャック・ブレルのＬＰが一枚。そして、レコードはそれだけでなく、夥しい数のＳＰレコードが裸のままでぎっしりと詰め込まれていた。&lt;br /&gt;
　僕はそのＳＰレコードのタイトルを調べてみたかったのだ。そうすることによって、この部屋の住人が何らかの形で風子の父親と関係のある人物なのかどうか、もしそうだとすればどんな人物像が想像出来るのか・・・・それを調べてみたかったのだ。&lt;br /&gt;
　だって僕らは、砂漠の中を何時間も無目的に歩いて、辿り着いたのがスコット・ウォーカーのレコードが掛かったままになっていた部屋だなんて・・・・。それをただの偶然と思うほうが無理というものだろう。何らかの目に見えない力によって、僕らはこの部屋に導かれたのに違いないのだ。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　ほとんどのSＰレコードは、バッハやベートーベンのクラッシクばかりだった。ただし、当然のことだろうけど日本語のものは一枚もなく、すべて作品番号で表記されており、クラッシクに疎い僕にはよくわからなかった。&lt;br /&gt;
　ところがたった一枚だけ、僕にもはっきりタイトルのわかるとんでもない代物があった。何と、「ハウンド・ドッグ」と「冷たくしないで」がカップリングされたのがあったのだ。&lt;br /&gt;
　まさか、この世にエルビスのSＰレコードが存在するなんて！！&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
「何してるの？」&lt;br /&gt;
　びっくりした。風子が目を覚ましたのだ。&lt;br /&gt;
 
    </content:encoded>

    <pubDate>Wed, 07 Oct 2009 19:15:11 +0900</pubDate>
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    <title>kaze31</title>
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            <category>風</category>
    
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    <author>nospam@example.com (金木静)</author>
    <content:encoded>
    「あたし、ここに来たことがあるような気がしてならない。どうしてだかわからないけど、どうしてもそんな気がしてならないの」&lt;br /&gt;
　風子が言った。&lt;br /&gt;
　実は、僕もまったく同じことを感じていたのだ。&lt;br /&gt;
「ねえ、この部屋なら、パパが住んでいたとしても、違和感がないと思う。そう思わない？」&lt;br /&gt;
　風子の言うとおりだった。やたら古めかしい建物と大きなステレオと、そしてスコット・ウォーカーのソロアルバム、それだけで風子の父親が住むに相応しい感じがしてしまう。&lt;br /&gt;
　ということはつまり、ここには僕や風子が住んでいたとしてもおかしくはなく、さらに言えばこの部屋は、&lt;br /&gt;
「ねえ、この部屋、五百石の部屋に似た雰囲気じゃない？」&lt;br /&gt;
　僕が感じていたことを風子はそのまま口にした。&lt;br /&gt;
「もしかしたら、この部屋は五百石の部屋を模して造られたものかもしれない」&lt;br /&gt;
「誰が？何のために？」&lt;br /&gt;
「よくわからんけど・・・・たとえば君のパパの古い恋人とかが・・・・君のパパを偲ぶために」&lt;br /&gt;
「パパの古い恋人って・・・・アメリカ人ってこと？」&lt;br /&gt;
「そうとは限らんさ。なにか心当たりない？」&lt;br /&gt;
「・・・・ないわ」&lt;br /&gt;
　そう言いながらも風子の顔はひどくくもり、いかにも何かを知っているふうだった。 
    </content:encoded>

    <pubDate>Sat, 26 Sep 2009 14:48:08 +0900</pubDate>
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    <title>tuki32</title>
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            <category>月</category>
    
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    <author>nospam@example.com (金木静)</author>
    <content:encoded>
    　二階の中央には長い廊下がある。&lt;br /&gt;
　その両側にはそれぞれ四つずつドアが並んでいる。まるで休業してしまったホテルか、でなければ病院か何かみたいに。&lt;br /&gt;
　やはり、あたしに見えていたそのまんまの光景だった。&lt;br /&gt;
　そして、正面の突き当たりのドアだけが開け放されていた。妙な音はその部屋から漏れてきているのだ。&lt;br /&gt;
　あたしはゆっくり近づいて行った。&lt;br /&gt;
「大丈夫か？」&lt;br /&gt;
　月が小声で言う。あたしのほうが先に立っていたからだ。&lt;br /&gt;
　あたしにはその音の正体がすかっりわかってしまっていた。あたしにとっては幼い頃から馴染み親しんだ音。&lt;br /&gt;
　だから当然、その部屋には誰もいないこともわかってしまっていた。いえ、もしいたとしても部屋の主は眠っているに違いないだろうと。&lt;br /&gt;
　ひょっとして誰かが死んでいるのかもしれないなんてことはまるで考えもしなかった。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　すべてが、あたしが思っていたとおりだった。&lt;br /&gt;
　部屋には誰もいなかった。ベッドも空っぽだった。&lt;br /&gt;
　そして、ベッドとは反対側の壁際に、とても大きくて古めかしいステレオセットがあり、そのターンテーブルがレコードをセットそたまま回り続けていたのだ。&lt;br /&gt;
　かなりの長時間こんな状態のままだったのだろう、レコードの最後の溝がすっかり擦れて真っ白になってしまっていた。針だってもう駄目になってしまってるだろう。あたしがうんと小さな頃、パパがよくこんな状態で寝入ってしまっていたことがある。レコードを止めてあげるのはいつもあたしだった。それで音の正体がわかったのだ。&lt;br /&gt;
　あたしはレコードをとめた。タイトルを見てみる。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　　ＳＣＯTＴ！！&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
 
    </content:encoded>

    <pubDate>Mon, 21 Sep 2009 10:33:12 +0900</pubDate>
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    <title>tuki31</title>
    <link>http://home.net50.ne.jp/sizuka-kanaki/blog/index.php?/archives/75-tuki31.html</link>
            <category>月</category>
    
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    <author>nospam@example.com (金木静)</author>
    <content:encoded>
    　月は上の気配を窺いながら、一人で階段を上りはじめた。&lt;br /&gt;
「あ、ちょっと待ってよ！」&lt;br /&gt;
　あたしも後に続いた。とても怖かったけれど、下に一人残されるほうがもっと怖かったのだ。&lt;br /&gt;
　大きな物音はさっきの一度だけだったけど、なんだか断続的な妙な音が響いていた。&lt;br /&gt;
「ねえ、何の音？誰かいるの？」&lt;br /&gt;
　あたしは月のベルトを引っ張りながら言った。&lt;br /&gt;
「シッ！」&lt;br /&gt;
　月があたしを制した。&lt;br /&gt;
　と、その時だ、あたしはこの建物には、いつか来たことがあるに違いないと、ほぼ確信めいた感覚を得ていた。&lt;br /&gt;
　それをデジャブと呼んでいいのか、それとも夢で見た記憶なのかは判然としなかったけれど、あたしにははっきり、この建物の二階がどんな間取りなのかが手に取るように見えてしまっていたのだ。&lt;br /&gt;
　そして、その正体こそわからなかったけれど、あたしがうんと小さい頃に、何度も繰り返し耳にしたことがある音に違いない、と。 
    </content:encoded>

    <pubDate>Fri, 18 Sep 2009 18:22:33 +0900</pubDate>
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    <title>kaze30</title>
    <link>http://home.net50.ne.jp/sizuka-kanaki/blog/index.php?/archives/74-kaze30.html</link>
            <category>風</category>
    
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    <author>nospam@example.com (金木静)</author>
    <content:encoded>
    　その町は、まさにゴーストタウンそのものだった。&lt;br /&gt;
　通りの両側に店の建物がずらり並んではいるのだが、何処もかしこもまるで人気が無かったのだ。&lt;br /&gt;
「あっ、すごい！あたしたち、大金持ちだわ！」&lt;br /&gt;
　風子が素っ頓狂な大声で叫んだ。&lt;br /&gt;
　そこは銀行だったのだ。&lt;br /&gt;
　カウンターに１００ドル紙幣がどっさり置かれ、金庫の扉も開いたまま、あたかもついさっきまで営業していたかのような、いや、もっと別の言い方をすれば、今も営業しているのにもかかわらず、行員と客が一瞬にして消えてしまったかのような、むしろそんな感じがしてならなかった。&lt;br /&gt;
「いくらお金があったって、どうやって使うつもりだい？この町には人っ子ひとりいやしないじゃないか」&lt;br /&gt;
「あ、そっか・・・・」&lt;br /&gt;
　次に僕たちは、向かいの居酒屋みたいな店に入ってみた。&lt;br /&gt;
「あっ！」&lt;br /&gt;
　二人同時に叫び、カウンターに一目散。パンや鶏の足や果物や、食べ物がずらりならんでいたのだ。&lt;br /&gt;
　風子も僕も、がっついて食べた。何しろ汽車を出てから何も口にしていなかったのだから。&lt;br /&gt;
「ねえ、どうなってんの？」&lt;br /&gt;
「何が？」&lt;br /&gt;
「だって、人が誰もいないのに・・・・」&lt;br /&gt;
「時間が止まってんだろ」&lt;br /&gt;
「そんなはずないわ、ほら、この鶏の足、こんなに温かいじゃない。スープだって、ほら、どうして？」&lt;br /&gt;
「知らんよ」&lt;br /&gt;
「あっ！！」&lt;br /&gt;
　僕と風子は目を見合わせた。二階で物音がしたのだ。&lt;br /&gt;
「今の、何？」&lt;br /&gt;
「・・・・」&lt;br /&gt;
「誰かいるの？」&lt;br /&gt;
「・・・・」&lt;br /&gt;
「ねえ、なんとか言ってよ！」 
    </content:encoded>

    <pubDate>Wed, 16 Sep 2009 20:19:07 +0900</pubDate>
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    <title>tuki30</title>
    <link>http://home.net50.ne.jp/sizuka-kanaki/blog/index.php?/archives/73-tuki30.html</link>
            <category>月</category>
    
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    <author>nospam@example.com (金木静)</author>
    <content:encoded>
    　あたし達は、真っ赤に膨れ上がった夕陽に向かって歩いていた。&lt;br /&gt;
　もう何時間歩き続けたことだろう。見えるのは砂っぽい平原ばかり、町らしきものは影も形も見えてきはしなかった。&lt;br /&gt;
「ねえ、このまま歩き続けて、何処かへ着けると思う？」&lt;br /&gt;
　月に言ったけど、何にも返事してくれないまま歩き続け・・・・しばらくしてからようやく、不機嫌そうな声で言った。&lt;br /&gt;
「いつかは何処かへ着けるさ」&lt;br /&gt;
　何てひどい返事でしょう。でも、応えようのないことを訊いたあたしが悪かったのかもしれない。月だって不安でならないのだ。ひょっとしたらあたし以上に。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　歩きながら、何の脈絡もなく、あたしは父との会話を思い出していた。&lt;br /&gt;
　あれは、あたしが三つか四つの頃だったと思う。布団の中で父は目を閉じ、あたしは豆電球の明かりを見上げていた。&lt;br /&gt;
「いつかは必ず、風子よりパパのほうが先に死んでしまうんだよ」&lt;br /&gt;
　あまりにも唐突に父が言った。&lt;br /&gt;
「パパは・・・・死ぬの？」&lt;br /&gt;
「いつかはね」&lt;br /&gt;
「あたしより先に？」&lt;br /&gt;
「そうだよ」&lt;br /&gt;
「どうして？」&lt;br /&gt;
「先に生まれたほうが先に死ぬって決まってるんだよ、誰だって」&lt;br /&gt;
　あたしにはまだ「死」の意味さえよくわかっていなかったけれど、どうしょうもなく悲しくて、涙が止まらなくなっていた・・・・。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　それから、あれは十二歳の年だったと思う。&lt;br /&gt;
「風子は、スコット・ウォーカーのどの歌が一番好きなんだい？」&lt;br /&gt;
「イン・マイ・ルーム」&lt;br /&gt;
「そうか、あれはウォーカーブラザーズ時代の歌でね、原曲はカンツォーネなんだよ」&lt;br /&gt;
　と父は説明してくれたけど、そこには何の表情の変化も見られなかった。&lt;br /&gt;
　実は、あたしが「イン・マイ・ルーム」と応えたのには訳がある。スコット・ウォーカーがソロになってからのほうが好きだと力説する父が、何故あの曲に限って、部屋に籠もって隠れるようにしながら、何時間もシングルレコードで聴き続けることがあるのか、ずうっと疑問だったのだ。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　その謎が解けたのは半年後のことだった。納屋で父の古いノートブックを見つけたのだ。&lt;br /&gt;
　父は、あたしのママとは初婚ではなかった。&lt;br /&gt;
　十九歳で、年上の女性と最初の結婚をしていた。&lt;br /&gt;
　その女性は、父の目の前で服毒死した。&lt;br /&gt;
　これが、父の永遠の心の傷なのだ。&lt;br /&gt;
　だって、「イン・マイ・ルーム」とは、妻を亡くした男の孤独を歌った詞だもの。&lt;br /&gt;
　そして、あたしにしょっちゅう「先に生まれたほうが先に死ぬって決まってるんだよ」と言い聞かせてくれたのは、彼女が年上だったからに違いない。きっと！&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
「ほら、町が見えてきたよ」&lt;br /&gt;
　月の声であたしは我に返った。&lt;br /&gt;
　 
    </content:encoded>

    <pubDate>Fri, 07 Aug 2009 18:57:34 +0900</pubDate>
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    <title>kaze29</title>
    <link>http://home.net50.ne.jp/sizuka-kanaki/blog/index.php?/archives/72-kaze29.html</link>
            <category>風</category>
    
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    <author>nospam@example.com (金木静)</author>
    <content:encoded>
    　古びた駅舎には誰もいなかった。&lt;br /&gt;
　外に出てみても、民家らしきものはまったく見当たらない。&lt;br /&gt;
「ねえ、どっちへ歩きだすつもり？」&lt;br /&gt;
　風子が訊く。&lt;br /&gt;
「さあ・・・・」&lt;br /&gt;
　僕が応える。&lt;br /&gt;
　左方向には、遠くに森とその向こうに山が見える。右方向には、白い道が続くだけで地平線まで何も見えない。&lt;br /&gt;
「だいたいさ、この駅はなんて駅なの？」&lt;br /&gt;
「さあ・・・・」&lt;br /&gt;
「あっ！」&lt;br /&gt;
　と風子の大声で、僕たちはほとんど同時に回れ右をした。正面から見れば駅名がわかるはずだと思ったのだ。&lt;br /&gt;
　ところが・・・・。あまりにも古びた駅の看板は、ペンキが剥げ落ちて一文字さえも判読できないような代物でしかなく、期待して振り返ったぶん、僕らの落胆はやたら大きく、僕も風子もその場にしゃがみこんでしまっていた。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
「ねえ、右に行く？それとも左？」&lt;br /&gt;
「左」&lt;br /&gt;
「やだ！」&lt;br /&gt;
「どうして？」&lt;br /&gt;
「怖いもん」&lt;br /&gt;
「怖い？何が？」&lt;br /&gt;
「あんな深い森、何が出てくるかわかんないわ」&lt;br /&gt;
「きっと民家もあると思う」&lt;br /&gt;
「やだ、絶対にやだ！」&lt;br /&gt;
「けど、右に行っても、何もなさそうだよ」&lt;br /&gt;
「ねえ、あなた西部劇って見たことある？」&lt;br /&gt;
「あるよ」&lt;br /&gt;
「アメリカの田舎の町って、たいていは駅からうんと離れた砂漠の中にあるじゃない。あたしはきっと、町があると思う」&lt;br /&gt;
　というわけで、僕たちは地平線まで続く白い道を歩くことになってしまった。 
    </content:encoded>

    <pubDate>Sat, 18 Jul 2009 19:13:25 +0900</pubDate>
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    <title>kaze28</title>
    <link>http://home.net50.ne.jp/sizuka-kanaki/blog/index.php?/archives/71-kaze28.html</link>
            <category>風</category>
    
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    <author>nospam@example.com (金木静)</author>
    <content:encoded>
    　列車が停まった。&lt;br /&gt;
「ねえ、ここは何処なの？」&lt;br /&gt;
　風子が窓の外を見たままで訊いた。&lt;br /&gt;
　僕にわかるわけがない。こちらこそ訊きたいくらいなのだ。&lt;br /&gt;
　ただ、メンフィスでないことは確実だ。例えて言えば、やたら古めかしい西部劇に出てくるようなアメリカの片田舎の小さな駅、そんな感じの駅に着いてしまったのだ。&lt;br /&gt;
「ここで下りて、町を歩いてみる？」&lt;br /&gt;
　風子が、あまり本気とも思えないような、やる気の無さそうな声で言った。&lt;br /&gt;
「だってこの列車、もう動かないと思う・・・・。ひょっとしたらまた動くかもしれないけど・・・・少なくともしばらくは動きそうにないと思うわ」&lt;br /&gt;
　それは僕も感じていたことだった。もう完全にエンジンを落としてしまっていたのだ。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　風子とホームに立つ。&lt;br /&gt;
　人など誰もいない。僕たちは完璧に二人っきりだった。&lt;br /&gt;
　ゆっくり歩きだす。&lt;br /&gt;
「ねえ、やはり今は二十世紀だった？」&lt;br /&gt;
「ああ、君の言うとうり今は二十世紀だ」&lt;br /&gt;
「何年？」&lt;br /&gt;
「１９７６年」&lt;br /&gt;
「えっ？」&lt;br /&gt;
「二十世紀の７６年」&lt;br /&gt;
「あたしだってまだ生まれていない年じゃない！なんでまた、そんな年に来てしまったの？」&lt;br /&gt;
「僕に訊かれても・・・・。むしろ、君のほうが何かわかるんじゃないのかな。何か記憶に残ってない？」&lt;br /&gt;
「記憶ですって？まだ生まれてもいない年なのよ」&lt;br /&gt;
「うん、だからね、君の両親が１９７６年に結婚したとか、それで新婚旅行にアメリカに行ったとか・・・・なんかそんな話、聞いたことない？」&lt;br /&gt;
「・・・・・」&lt;br /&gt;
「そうだな、君のお父さんじゃなくても、１９７６年にスコット・ウォーカーが何かをしたとか、エルビスがどうしてたかとか・・・・そんな話でもいいから聞いたことない？とにかく、僕らは何かの理由があって、ここに来てしまったんだと思う。絶対に、何かの理由があるはずなんだ。そうだろ？」&lt;br /&gt;
「そうね・・・・」&lt;br /&gt;
「君自身の記憶じゃなくていい。なんでもいいから、何か心当たりってないかな？」&lt;br /&gt;
「わからないわ・・・・そんなこと言われても・・・・」 
    </content:encoded>

    <pubDate>Mon, 29 Jun 2009 14:40:53 +0900</pubDate>
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    <title>tuki29</title>
    <link>http://home.net50.ne.jp/sizuka-kanaki/blog/index.php?/archives/70-tuki29.html</link>
            <category>月</category>
    
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    <author>nospam@example.com (金木静)</author>
    <content:encoded>
    　列車は草原を走り続けている。&lt;br /&gt;
　地平線の果てまで緑一色の草原を。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　月がパソコンをいじりながら、わけのわからない外国語の歌を唄っていた。&lt;br /&gt;
　ブルガリア語じゃないかしら、と思った。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
「ねえ、それってブルガリアの歌？」&lt;br /&gt;
「うん、そうだよ。よくわかるねえ」&lt;br /&gt;
「あたし、うんと小さい頃にブルガリアに行ったことがある」&lt;br /&gt;
「君が？へえ・・・・。いくつの頃に、誰と？」&lt;br /&gt;
「パパがね、ロシアに連れって行ってくれたことがあるの。そのときに足を伸ばして、ハンガリーとブルガリアをまわって帰ってきた」&lt;br /&gt;
「へえ・・・・すごい旅だね」&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　そう、あれはすごい旅だったのだ。&lt;br /&gt;
　何しろパパの目的は、サーシャとのデートにあったのだろうから。&lt;br /&gt;
　当然、ママは同行せず（もっとも、病弱なママには海外旅行なんて無理だったのでしょうけれど）、あたしとパパの二人だけの旅だった。&lt;br /&gt;
　ロシア（モスクワ）には、あまりいい思い出がない。あたしはほとんどホテルに缶詰にされ、パパは通訳のサーシャとデートばかりしていた。だから、モスクワには三週間もいたはずなのに、なんにも覚えていないのだ。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　ブルガリアでのことは、よく覚えている。サーシャがいなくて、本当にパパと二人っきりの旅だったのだし、特にうんざりするくらいの長時間、列車に揺られて「バラの谷」へ行った日のことは。&lt;br /&gt;
　あたしは今でも、あの「バラの谷」と呼ばれている町が何という町なのかは知らない。降りたのはとても小さな駅だった。&lt;br /&gt;
　パパはどこかから自転車を用意してきて、あたしを荷台に乗せて走りだした。&lt;br /&gt;
　お尻が痛くてならなかった。だって、町の中の道路はすべて、アスファルトでもなければ砂利道でもなくて、ガッタガタの石畳だったから。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　やがて自転車は町からはずれ、今度は砂利道を走りつづけた。&lt;br /&gt;
　お尻が痛くてならなかったあたしは、パパの背中にしがみついて、歯をくいしばりながら目を閉じたままでいた。そうにでもしていなければ、とてもじゃないけど我慢出来なかったのだ。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
「風子、着いたよ。ほら」&lt;br /&gt;
　パパが言ったけど、あたしにはすぐにはピンとこなかった。&lt;br /&gt;
「えっ？どこにバラがあるの？」&lt;br /&gt;
「全部バラさ。ほら、地平線まで続いてるすべてがバラさ」&lt;br /&gt;
　あたしは、びっくりした。&lt;br /&gt;
　言葉なんか、なんにも出て来なくなってしまっていた。&lt;br /&gt;
　目の前にあるのがピンクの花をつけたバラの木で、それが本当に地平線まで延々と続いていたのだ。こんな光景が現実にあるなんて！&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
　そして、パパが呟いた。&lt;br /&gt;
「あいつにも見せてやりたかったな・・・・」&lt;br /&gt;
　パパの目は涙ぐんでいた。&lt;br /&gt;
　あたしには、それが嬉しくてたまらなかった。&lt;br /&gt;
　だって、ようやくパパの心の中にママを見つけることができたから。&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
&lt;br /&gt;
 
    </content:encoded>

    <pubDate>Fri, 08 May 2009 17:37:57 +0900</pubDate>
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